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 「映画の中に見るお葬式」こんなテーマでこのコラムを書き始めたのが今年の春。年を越えると、もうちょっとで一年になりますが、まずは今年を振り返って公開された映画から何本かを・・・ 以前ほど劇場や試写でも映画を観る機会が減ってきているのが寂しいですが、ベスト3と言っていいのは奇しくも全て邦画です。

1984年作品。
阿佐田哲也の原作小説「麻雀放浪記」
の第一巻(青春篇)を映画化。
監督は、デザイナー、イラストレーターとして当時活躍していた和田誠。
原作の持つ世界観の再現性の非常に高い作品。

 舞台は敗戦直後の東京(銀座/上野界隈)。
瓦礫の残る廃墟、復興前の東京の風景を映画はモノクロームで描く。
元々デザイン、イラストの表現の世界に投じていた和田監督らしい拘り。
観るものは嫌味なく、すうっと入れる。
物語は、この街を舞台に混乱の中を生きる"さすらいのギャンブラー"たちを描く。
引き上げてくれたクラブのママには、「いい?この世界は、ボスと、手下と、敵しかいないの。」と教えられ、それでもそこに友情や愛や求めつつ生きる年若いギャンブラー"坊や哲"(真田広之)を軸に、一癖もニ癖もギャンブラーが集まる。彼らとの出会いから新たな人生を学んでいく・・・

1992年のロバート・アルトマン監督作品。
同年のカンヌ映画祭の監督賞/主演男優賞の受賞作品。
所謂、ハリウッドの内幕ものをベースにミステリーで仕上げた群像劇。
80年代は、まったく映画を撮らなかった(撮らせてもらえなかった)アルトマン監督の言ってみれば復帰作。
その分、映画業界への皮肉が効いている。
この後、翌年に「ショート・カッツ」。さらにその翌年には「プレタポルテ」を撮り、完全に、名声を取り戻します。
当時は、こうしたキャストが多く、そのキャストごとの背景やストーリーが絡み合う連鎖群像劇が珍しく、それだけでどういう風に一本の映画に仕上げるのか、ものすごく興味がありました。
厳密には「ザ・プレイヤー」は連鎖群像劇までとは言えないかもしれませんが、その萌芽があり、その後の彼の作品やポール・トーマス・アンダーソン監督の「マグノリア」なんかにも繋がります。

 日本では、このタイプの映画が少ないです。
なぜでしょうか?

 1993年製作のフランス映画。
日本公開は1994年。東京・渋谷のBunkamura
ル・シネマで。
ポーランド出身のクシシュトフ・キェシロフスキ監督作品。
フランス国旗"トリコロール"の青/白/赤に模した三部作の第一作。
青は、自由。
白は、平等。
赤は、博愛、が国旗に描かれる色の意味。
この作品は「青」=自由(再生)を描く。
ヨーロッパの著名作曲家の妻が主人公。
夫が来るべき欧州統合を前にそれを記念した協奏曲を作曲構想中、家族で交通事故に遭う。
そして夫と幼い娘を失う。独りだけ生き残る。
事故により自身も重傷を負い病院に入院中、現実に絶望し一度は死を選ぼうとするが、そこから向き直り"再生"の道を選ぶ。
しかし、なぜか夫の新曲の旋律が甦ってくる。彼のパートナーは未完の協奏曲の完成を宣言する。そして夫の過去の秘密までもが・・・

 この難役を演じたのがジュリエット・ビノシェ。
極力感情表現を抑えた演技で映画そのものをコントロールする。
それでも抑えつつ、夫のパートナーだったオリヴィエとの対峙、夫の過去の愛人との対峙など、その時々に想いを伝えていく。
それは自らが自由になることにより、周囲の人をも再生し解放しようとするかのよう。